The Season

東京 冬の展覧会・2026–27年の瀬から早春へ、東京の美術館で

Anthology編集部 ·

Anthology編集部が選び、各館の公式サイトで確認しています。掲載料はいただいていません。 この選集について

開催中

ルーヴル美術館のルネサンス・コレクションと、初来日のレオナルド。

画像: 国立新美術館

このレオナルドは、一般に《美しきフェロニエール》と呼ばれています。フェロニエールはフランス王フランソワ1世の愛人とされる女性ですが、文献に現れるのは17世紀になってからで、今ではほぼ架空の人物と考えられています。この名前はもともと別の横顔の肖像画のものでした。フランス革命の後、二つの絵が取り違えられ、19世紀初めにアングルの作品にもとづく版画が広く出回ったことで、この名前が残りました。

描かれた人物が誰なのかは、いまも定まっていません。ミラノ公の愛人ルクレツィア・クリヴェッリとする説が、多くの研究者に支持されています。

レオナルドがこの絵を描いたのは、1490年代のミラノです。当時のミラノの肖像は横顔が主流でしたが、彼は北方の画家たちが生んだ斜め四分の三の向きを用いました。2014年から2015年の調査で、後頭部と首の輪郭がわずかに描き直され、頭と体がほんの少し違う方向を向くようにされていたことがわかりました。右目の瞳の位置も動かされており、そのため彼女の視線はつかみにくいものになっています。

国立新美術館では、ルーヴル美術館の所蔵品50点余りを、レオナルドを手がかりに旅、技法、古代、肖像の四つのテーマで紹介します。デューラーの木版画《サイ》もそのひとつです。もともと「フェロニエール」と呼ばれていた横顔の肖像画も、あわせて展示されます。

解説カードルネサンス

  • 要予約

まもなく開幕

竹久夢二の美人画と、暮らしのためにデザインした千代紙、手ぬぐい、浴衣。

画像: 東京国立近代美術館

1919年の《黒船屋》は、黄八丈の着物の女性が黒猫を抱き、「黒船屋」と書かれた木箱に腰かける姿を描いています。黄と黒のほか、襟はオレンジ、帯は緑、襦袢には少しピンクと紫がのぞきます。当時、黒猫は結核に効くという俗信がありました。この絵は、病に伏していた恋人・彦乃を思って描かれたと考えられています。

竹久夢二(1884–1934)は画家であり、詩を書き、記者も務め、デザインや挿絵も手がけました。細身で目の大きな女性像は「夢二式」と呼ばれ、雑誌の若い読者に愛されました。1914年には日本橋に「港屋絵草紙店」を開き、自らデザインした千代紙や封筒、手ぬぐい、半襟を売りました。画家が作品を商品にして自分で売るのは当時新しいことで、東郷青児ら若い芸術家もよく店に集まりました。

東京国立近代美術館は、全国の夢二コレクションから作品と資料約500点を集め、五つの章で紹介します。雑誌の挿絵に始まり、暮らしの品のデザイン、懐かしさと異国への憧れをあわせた美人画、関東大震災の後に人気が衰え、榛名山での美術研究所の構想がかなわなかった晩年、そして雑誌のモダンガールへ。《黒船屋》は約40年ぶりに東京で公開されます。

解説カード美人画挿絵・イラストレーション

  • 会期中に展示替えあり
  • 公開日限定

テート美術館のターナーと、二百年後に彼に応える現代の作品。

画像: 国立西洋美術館

18世紀の末、バークとカントは「崇高」と呼ばれる感情について論じました。自分よりはるかに大きなものを前にしたとき、恐れのなかに、どこか惹きつけられる気持ちがまじる。ターナー(1775–1851)は、そうした場面を数多く描きました。1810年に発表された《グリゾン州の雪崩》では、大きな岩が山の小屋へと落ちていきます。晩年の《荒海とイルカ》では形が画面の端へ退き、残るのはほとんど光と水です。

彼は蒸気機関の時代を生きた画家でもありました。捕鯨船や、霧にまじる煤煙も、その絵のなかに現れます。

今回の作品はすべてテート美術館の所蔵です。ターナーは生涯の作品をイギリスに遺し、そのためテートは最も多くのターナーを持っています。国立西洋美術館は、各章に後の時代の作品を一点ずつ置きました。オラファー・エリアソンの《溶ける氷河のシリーズ 1999/2019》は、同じ氷河を20年の間をおいて撮った30組の写真です。オトリス・グループの映像作品《Hydra Decapita》は、その海の奴隷貿易を取り上げます。

バークは、恐怖はある距離をおいてはじめて崇高になると書きました。氷河の写真の前では、その距離が、少し縮まったように思えます。

解説カード崇高

  • 公開日限定

森万里子、90年代のサイボーグから宇宙の光へ。

画像: 森美術館

1990年代半ば、森万里子は自らのパフォーマンスを写真と映像に収め、まだ黎明期だったCGで、自分をSF映画のような「サイボーグ」に変えました。そこで問われていたのは当時の日本、アニメ、ジェンダー、人と機械の境界でした。

やがて関心は、仏教における死と宇宙の捉え方へと移っていき、涅槃や浄土を思わせる、なかに入ることのできる大型のインスタレーションが生まれます。2000年代からは、時空を超えてすべての生命がつながるという「ワンネス」を掲げ、科学者や研究者とともに、縄文やケルトの古代文化、唯識思想、素粒子物理学、宇宙論を探ってきました。2006年の《トムナフーリ》は、超新星爆発で生まれるニュートリノを目に見える光に変えます。2011年の《プライマル・リズム:サンピラー》は、冬至の太陽のためにつくられました。

展覧会は森美術館とニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム財団の協力によるもので、日本での大規模な個展は、2002年に東京都写真美術館で開かれた「ピュアランド」以来です。タイトルの「燦燦」は光を表しています。仏教の慈悲と智慧の光、仏像の光背、そして神道の太陽神。最大の作品《Wave UFO》(1999–2002)は、なかに入ることのできるポッドで、体験者の脳波が映像になって映し出されます。

解説カードメディアアートとビデオ・アート

  • 体験は人数限定

円山応挙の写生と、ひとつの寺のために描き尽くした部屋。

画像: 江戸東京博物館

円山応挙(1733–1795)は若いころ、「眼鏡絵」を描いていました。のぞき眼鏡のための絵で、レンズに目を近づけると、箱の中の街並みに西洋の遠近法の奥行きが生まれます。応挙はここで、遠近と光への感覚を養いました。のちに彼の絵は、実物をよく観察する「写生」と呼ばれます。彼が見ていたのは形だけではなく、生き物の気配や光の移ろいでもありました。

晩年、彼はその観察を空間全体へと広げます。兵庫県香美町の大乗寺は「応挙寺」とも呼ばれ、「孔雀の間」「芭蕉の間」「山水の間」の障壁画が伝わります。部屋ごとに画題と構図が計画され、襖と壁が一枚ずつつながって、ひとつの世界をつくります。1788年の京都の大火では応挙も被災し、御所造営の仕事を終えてから、大乗寺の障壁画を仕上げました。《松に孔雀図襖》の年記は寛政7年、彼が亡くなった1795年です。

展覧会は年号ごとに五つの章で、初期から晩年までをたどります。のぞき眼鏡そのもの、大英博物館の《氷図屏風》、そして大乗寺の重要文化財《山水図襖》と《松に孔雀図襖》も並びます。主催者は、彼の空間のつくり方を「空間革命」と呼んでいます。

解説カード円山・四条派

  • 会期中に展示替えあり
  • 公開日限定

法華経のために写された経、建てられた塔、つくられた仏像。

画像: サントリー美術館

法華経は、すべての人が成仏でき、目の前の苦しみからも救われると説きます。そして、経を書き写すこと、経巻を飾ること、塔を建てること、仏像をつくることを、善い行い「作善」として挙げています。だから千年以上ものあいだ、人々は経を読むだけでなく、一字ずつ写し、一刀ずつ刻んできました。

とりわけ心を尽くしたのが平安時代の貴族です。当時、釈迦の入滅からあまりに長い時が過ぎ、正しく教えを実践できる者がいなくなる「末法」が近づいていると信じられていました。人々は力を合わせて経を写し、経巻を華やかに飾って寺社に奉納し、あるいは土に埋めました。朽ちることのないよう、金属板や粘土板、石にも経文を写しました。比叡山横川から出土した国宝《金銀鍍宝相華文経箱》は、1031年に経巻を納めるためにつくられたものです。

サントリー美術館は、造塔、写経と奉納、造像の三つの章で構成し、飛鳥〜奈良時代の国宝《銅板法華説相図》や、四天王寺の国宝《扇面法華経冊子》を紹介します。鎌倉時代の象と獅子(重要文化財)は、普賢菩薩と文殊菩薩の台座だったとみられる一対で、2025年に同館の所蔵となり、今回が初公開です。最後の章では江戸の絵師たちを取り上げます。葛飾北斎は、外出の際に法華経を唱えながら歩いたと伝えられています。

解説カード作善と装飾経

  • 会期中に展示替えあり
  • 公開日限定

東京国立博物館で初めての源氏物語展。平安の絵巻から江戸の浮世絵まで。

画像: 東京国立博物館

『源氏物語』は書かれてまもなく、絵に描かれるようになりました。国宝「源氏物語絵巻」は物語のおよそ一世紀後、12世紀前半に描かれた、現存最古の源氏絵です。東京会場に出品されるのは「柏木三」。生まれたばかりの薫を抱く光源氏の姿です。物語のなかで、薫は実は柏木と光源氏の妻とのあいだの子でした。光源氏はそれを知りながら、その子を腕に抱いています。

主催者は、これを史上最大規模の源氏物語展としています。平安の絵巻から戦国時代の源氏絵へ。土佐光信の「源氏物語画帖」は、五十四帖すべての場面がそろう同種の作品のなかで現存最古のもので、アメリカのハーバード美術館から里帰りします。京都会場が能を中心としたのに対し、東京会場は浮世絵に焦点を当てます。江戸時代、源氏物語は美人画の人気の画題となりました。礒田湖龍斎の《美人愛猫図》は東京会場のみの展示です。

一つの物語が、千年にわたって描かれてきました。平安の絵巻は人物の胸のうちにとどまり、戦国の屏風はにぎやかな場面を描き、江戸の浮世絵は物語の人々を町の美人に描きかえました。

解説カード源氏絵

  • 会期中に展示替えあり

この選集について:Anthology編集部がこの季節の大型展を選び、会期中も更新しています。すべての展覧会を各館の公式サイトまたは公式発表で確認しており(2026年10月19日時点)、掲載料はいただいていません。会期や料金に変更がある場合は、各館の発表をご確認ください。

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